音読する中学英語

中学英語とオンライン勉強会について記録するブログです。

中高生に贈りたい一冊『手紙屋 蛍雪編~私の受験勉強を変えた十通の手紙~』と読書感想文

夏休みの宿題の定番、読書感想文。でも難易度は意外と高くないですか?読書する習慣がない子は本を一冊読むことが難しいし、感想文の書き方も良くわからない。

最近は朝の読書運動が小中学校に浸透し、小中学生が本に触れる機会は以前より増えたそうですが、インターネットに囲まれて育った子供たちには、読書感想文はいまもハードルの高い課題に思えます。それは私が勉強を教えているアキにとっても。

そこで、私は考えを改めました。

読書したあとに感想文がしっかり書ければ素晴らしいけれども、本を一冊読めれば良しとしてはどうかと。志が低くてすみません。

実際のところ、本を一冊読まずにあらすじや結末だけ読んで、適当に感想文を書く子もいると思うのですが、それよりも本を一冊読む経験を積んだほうがずっといい。

夏休み当初、アキも感想文を適当にでっちあげようと企んでいたので、それに待ったをかけて、一冊の本を贈りました。

手紙屋 蛍雪編~私の受験勉強を変えた十通の手紙~』(喜多川泰著) です。

手紙屋 蛍雪篇〜私の受験勉強を変えた十通の手紙〜

手紙屋 蛍雪篇〜私の受験勉強を変えた十通の手紙〜

 

この本は、将来の進路に迷う高校二年生の主人公が、手紙屋さんと文通をする中で、何のために勉強するのか、何のために進学するのか、自分で自分の人生に意味を与えること、それらを往復書簡の形で考え直す内容です。

 私は、勉強は一つの道具にすぎないと思っています。

 ですから、「やらないよりは、やったほうがいいだろう」という考え方は間違っていると思うんです。

 むしろ、変な使い方しかできないのなら、勉強なんて道具は捨ててしまったほうがいい。

 

引用元:『手紙屋 蛍雪編』(喜多川泰著)52頁

学生が抱える学業での根本的な疑問をすくいあげて、具体例を挙げながらやさしい言葉で一つの考え方を示していきます。考え抜かれた回答の数々に、著者の愛情と情熱を強く感じるとても素敵な本です。

合格するかしないかではなく、自分を磨けたかどうかによって、勉強という道具をうまく使えたかどうかが決まる。だからこそ合格して不幸になる人もいれば、不合格になっても幸せを手にする人もいるのです。

 

引用元:『手紙屋 蛍雪編』(喜多川泰著)79頁 

 勉強している若者というのは、まだ何の役にもたっていない一本の木を削ったり、磨いたり、形を変えたりして、何かの意味を自分に与えようとしているわけです。

 そうすると、削っている途中で迷いが生じます。

 

「自分という材料は、本当にこの削り方でいいんだろうか?」

 

引用元:『手紙屋 蛍雪編』(喜多川泰著)105頁

読書感想文の本は友情、スポーツ、冒険、家族などを描いた小説がよく選ばれると思うのですが、『ビリギャル』と同じく、勉強に対する気持ちが少しでも変われば良いなと思いこの本を選びました。

中学二年生のアキにとって『手紙屋』は難しいところもあったようですが、何か少しでも感じ取ってくれたらそれでいい。

『ビリギャル』も『手紙屋』も著者は塾の先生で、豊富な指導経験がうかがえます。

読書の伴走と音読

本を渡しても、アキの場合は一人で最後まで読めないかもしれないと思ったので、少し工夫しながら途中まで一緒に読むことにしました。

1 最初の部分だけをコピーして渡す
読み慣れない子供にとって単行本一冊は分厚く、気後れすると思ったので、序盤の40ページぐらいをコピーして、まず試し読みとして渡しました。話が軌道に乗るまでは挫折しやすいですよね。

2 一緒に音読する(試し読み)
序盤の40ページを1ページ交代で一緒に音読します。30分ぐらいで読めました。読めない漢字は随時教えながら。
40ページを読み終わると、
「早く続きが読みたい!」と反応が。本人と相談してこの本を読むことに決定。

3 一人で黙読 & ときどき一緒に音読
本を一冊渡し、続きを一人で読んでもらいます。途中で挫折しないように、期間を少し置きながら、勉強会の途中であと2回ほど一緒に音読しました(1回15分程度)。これで本全体(240ページ)の半分まで到達しました。

一緒に音読すると強制的にぐいぐい進むので、読後は続きが気になるようです。まだ手助けが必要かなと思っていたら、半分以降は一人で一気に読みました!

 

英語の音読と同じで、国語の音読でも最初はたどたどしい読み方だったのが、続けていると少しずつスムーズになってくるのがわかります。

国語の音読を推奨されている教育学者の斉藤孝さんは、小学生の講習会で夏目漱石の『坊っちゃん』を一冊全部、6時間かけて一緒に音読するそうです。以前読んだ下の著書でその様子がちらっと出てくるのですが、今回少し真似てやってみました。

結果を出す人の「やる気」の技術 “特訓”式モチベーション術 (角川oneテーマ21)

最初は一冊音読することを嫌がっていた子どもたちが、続けるうちに読み方も上達し、最後まで読みたいと自ら言いだすほど熱中していく様が面白いです。

このリンクのインタビュー記事の最後の方でも、『坊っちゃん』の一気音読の話が出てきます。

『試練を乗り越え生きる力をつくる』 明治大学文学部教授 齋藤 孝 ─ くらし塾 きんゆう塾 ~インタビュー~ ─|知るぽると

 

アキの夏休みの宿題はほぼ終わり、最後に残った読書感想文をいま書いているようです。もう少し早めだったら、感想文も一緒に推敲しようと思っていたのですが、今回は時間切れです。

「最後まで読んだよ」と教えてくれたとき、うれしそうな表情でした。