音読する中学英語

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英文法の復習で最近読んだ入門参考書

自分の復習のためと、英語を教えるときにも役立つかもしれないと思い、英文法の入門参考書を読みました。『江川泰一郎 英文法の基礎』(江川泰一郎著)です。

ゼロから学ぶためというよりも、中学英語がある程度わかっている人が復習として使うと面白く読める本だと思います。

江川泰一郎 英文法の基礎

江川泰一郎 英文法の基礎

 

この本を読みながら、何度もため息が出そうになりました。

こんなにわかりやすくまとめられた参考書が、60年以上も前に出版されていたものだったからです。正確には、1956年初版の本が2014年に新装版として出版されたものですが、戦後復興期を終えようとする頃に、こんな参考書がすでに発売されていたなんて。

英文法の入門書はこれ1冊でいいんじゃないか、そう思える本です。(もちろん読む人の好み、学習状況などによって評価は変わると思います)

いまどきのカラフルで、図解やイラスト満載の参考書に比べると、白黒印刷で、図解も必要最低限しかありません。ですが私にとっては、それがかえって読みやすかったです。語り口調の文章で書かれていて、実況中継本のような印象です。

江川泰一郎さんといえば、オレンジ色の表紙で分厚くて詳しい『英文法解説』が有名です。こちらは1953年初版。これが大学受験用の参考書で高校生向けに書かれたものと、大人になってから知り驚きましたが。

英文法解説

一方、『江川泰一郎 英文法の基礎』は、英文法を熟知した専門家が、中学生向けに説明した感じです。全体を俯瞰しながら、細部は省略し、骨格の部分をやさしく説明してくれます。

特に、全体約250ページのうちの、最初の30ページも割いて「英語の文の組み立て」を説明しています。中学1年生で習う疑問文、命令文の語順の説明について、以下に引用します。

疑問文の語順

(中略)

日本語の文と英語の文を比較した場合の一番の大きなちがいは、この語の語順にあります。ですから、英語を勉強するには一番はじめに、

主語+動詞+説明語

という英語の文の組み立てを、しっかり頭にいれておくことが大事なのです。

 

(中略)

動詞+主語+説明語 ?

という疑問文の基本となる語の順序も、しっかり頭に入れてください。この二つの順序さえ知っていれば、英語の文の組み立てをまちがえることはないのです。 

 

(中略)

be動詞をのぞくほかのすべての動詞をふくむ文の疑問文を作るには、一番はじめに、Do(Does, Did)をつければよいということがわかります。

これを公式であらわせば、

Do(Does, Did)+主語+動詞+説明語

となります。

 

(中略)

助動詞も一種の動詞ですから、Do you/ Does he/ Did they つまり「(助)動詞→主語」によって、動詞+主語という、疑問文の基本となる語順は、いちおう守られている。

 

(中略)

英語の疑問文の基本となる組み立ては動詞+主語+説明語 ?であるということ、そしてこれを忠実に守るのはbe動詞だけだが、そのほかの動詞の場合にもDo(Does, Did)の力を借りて、この基本の組立のさらに中心になる動詞+主語の部分がくずされずにいることがおわかりでしょう。

一般動詞の文で疑問文を作るときは文頭にDoを置く、としか書かれていない参考書は多いです。

しかし、この本では疑問文で文頭に使われるDoの品詞は助動詞で、その助動詞を文頭に置くことで、動詞+主語の疑問文の基本の語順が守られている、と説明します。

命令文の語順

命令文を作るときは主語を省略する、としか書かれていない参考書は多いですが、この本では、その理由がさらっと書かれています。

命令文ではなぜ主語を略すのでしょう。それは言うまでもなく、命令というものは相手、すなわち第二人称(You)に向って言われるにきまっているからです。 

 

このほかに、関係代名詞のところでは例文を挙げながら、「一語で代名詞と、接続詞の役目をするので、接続代名詞と言ってもいい」など、端的な説明が随所に書かれています。(関係代名詞の説明は、ほかの入門参考書も数冊読み比べましたが、私にとっては本書が一番わかりやすかったです)

中高生が英語を嫌いな理由のひとつに、文法や単語の暗記が延々と続いて面白さが感じられない点があると思います。

語学学習を突き詰めると結局は暗記と慣れだと思いますが、単なる暗記事項と処理してきたことも、その結論に至るまでの背景や経緯への理解が少しでも進むと面白さが感じられます。

勉強として身構える必要はあまりなくて、中学英語がある程度わかっている人ならば、読み物として楽しめると思います。最近の学習参考書に比べると値段が高いですが、学校や地域の図書館にもきっとあるはず。

英語なんて暗記科目だと嫌気が差していた高校生のときの自分に贈りたい、そんな本です。